Phosphorescent City
KAZUKI MOTANI
Speculative Urban Designer |Japan
OTHER PERSPECTIVE
DETAILS OF THE WORK
AWARDS 2021 FINALISTS
2045年、都市部では大量電力消費に対する環境的責任から、ソーラーパネルを登載するビルが一般的になった。そんな中、蓄光の基底状態への電子遷移を任意時間遅延させる技術が開発された。この技術を使用した建築ファサード用蓄光塗料「Phosphorescent Surface」の登場によって、日中の太陽光を吸収したファサードを、夜間に光源として使用することが期待されている。
このような未来においては、電力を光に変換する従来式の街灯やソーラーパネルは、無用の長物となるだろう。「Phosphorescent Surface」が普及する都市に佇む街灯やソーラーパネルは、大変ユニークなトマソンと言える。
本作品では、本技術を実験的に導入した未来の都市「Phosphorescent City」に没入する。街灯やソーラーパネルがトマソンと化し、ファサードが光源と化す、あり得る未来の都市を体験して欲しい。
作品の超体験にはVR HMDが必要になります。体験方法はこちらをご覧ください。
CREATOR PROFILE
KAZUKI MOTANI
Speculative Urban Designer |Japan
1995年愛知県生まれ。横浜国立大学 理工学部 数物電子情報系学科 電子情報システムEP卒業。東京大学大学院 学際情報学府 先端表現情報学コース修了。大学在籍時は信号処理を研究しつつ、結婚式場での映像制作、MVの監督・撮影・編集を経験。大学院ではスマートフォンを用いた屋内測位と行動認識を研究しつつ、インスタレーション制作や都市デザインの企画立案を経験。受賞歴にWIKITOPIA INTERNATIONAL COMPETITION 最優秀賞、IEEE GCCE2019 Excellent Paper Award Bronze Prize、SONY U24 CO-CHALLENGE 2020 ファイナリスト。出展歴に東京大学制作展、SICF20。都市と人をつなぐテクノロジーとアートの可能性を追求するために、スペキュラティブ・アーバンデザイナーとして活動。併せて都内の総合ディベロッパーで勤務。
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現実の世界に変化をもたらすような仮想の場所は、デザインにおいて強力なステートメントとなります。バーチャルな世界が私たちをどんどん包み込んでいくことは明らかですが、この「都市」には、私たちの現実世界に美と地球への敬意を提供する可能性を感じます。映画のようなサウンド、光の変化、現実世界との境界を行き来することで、親近感のある魔法が生まれ、変化の感情的な感覚を与えてくれました。VRの役割は、私たちの都市を変え、「役に立たない」ものを捨て、それを生き生きとした色彩に置き換え、同様に私たちを現実の新しい芸術に連れて行くことができるのでしょうか。The Phosphorescent Cityは、私が選んで住みたいと思う場所です。
審査員
Zowie Broach
Royal College of Art Fashionプログラム責任者
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まず、来るべき近未来においての、エネルギー革命の物語設定が大変秀逸である。建築ファサード用蓄光塗料が太陽光を吸収し、夜間光源として機能するという発想が素晴らしい。所謂ブレードランナー的ディストピアではなく、整然とした郊外の風景を照らし出す、ビビッドな蓄光光源や、空中を舞う20世紀的デザインの街灯。そのような色鮮やかなデッドテック・フューチャーの投影が、過去のどんなSFにも描かれていなかったPOPアヴァンギャルドな近未来像を成立させている。退廃的な未来ではない、にも関わらず、ソーラーパネルが無用の長物となった2045年。作者はそのことを赤瀬川原平の"トマソン"という考現学用語を使って説明している。なんて粋なVRなんだろう!!!
審査員長
宇川直宏
現”在”美術家 / DOMMUNE主宰
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このプライズは唯一独断が許されるゆえ、全く迷うことなく「Phosphorescent City」を選出した。SILVERとSUPER DOMMUNE PRIZEのW受賞である。先述のとおり、作者のKAZUKI MOTANI氏は、この近未来におけるデッドテック・フューチャーを、赤瀬川原平の”トマソン"を引用し描き切った。このコンセプトは、不動産と一体化しつつ「無用の長物的物件」となった建築物の”ナンセンスさの美学"のことを指すが、スーザン・ソンタグの"キャンプ”や、アンドレ・ブルトンの”シュルレアリズム"に通じるような、常軌を逸したイメージや過剰なリアリティを、愛を持って失笑しているようにも感じる。そう、この作品は、ヴァーチャル都市空間をユーモラスなレンズによって再発見し、"路上観察学”の視点で幻視させているのだ!!!!!
宇川直宏
現在美術家(DOMMUNE)
FEATURING WORKS
ファッション・音楽・映像・グラフィック・イラストレーション...etc
同時代のリアルな感覚を共有できるアーティストとともに創造する新たなカルチャー体験の作品群。