Immersive Novel
カミエナ
インディゲームクリエイター / ディレクター |Japan
OTHER PERSPECTIVE
DETAILS OF THE WORK
「体験できる小説」をコンセプトに、没入型ノベルゲームを制作しました。
本作では、プレイヤーがとあるイヌの幽霊と出会い、一緒に遊んだり、コミュニケーションを取ったりしながら物語を進めていきます。物語の進行は「地の文」が中心となり、プレイヤーの動きが地の文として反映される一方、地の文がプレイヤーを導くという独自の演出が特徴です。
モニター越しでも仮想空間でもなく、現実を拡張した空間で、普通は会えない人や生き物とコミュニケーションが取れるARならではの作品を試みました。さらに、物語に地域性を絡めることで、場所とテーマを変えればさまざまなバリエーションの体験が可能となる、柔軟なひな型を持つ作品としても仕上げています。
ゲームが終わった後、「Immersive Novel」での体験が「その土地での思い出」となり、再び訪れたときにふと思い出す——そんな体験を届けられる、新たな作品ジャンルになることを目指しました。
この作品は3日間のゲームジャムで制作しました。ねぎさん、哀上オワリさん、Nonanさん、國富空太さんとともに、即興セッションのような形で生み出された一作です。その場で生まれたアイデアや化学反応が詰まったこの作品を、ぜひ体験してみてください。
CREATOR PROFILE
カミエナ
インディゲームクリエイター / ディレクター |Japan
インディゲームクリエイターとして活動中。チーム制作を得意とし、主にディレクションやプロデュースを担当しています。また、チームやプロジェクトに応じて、企画・シナリオ・プログラム・絵作りなど、幅広い役割を担うこともあります。
ただ「創る」だけでなく、作品を届けるところまでをモノづくりの一環と捉え、その過程すべてにこだわりを持って取り組んでいます。
学生時代からモノづくり全般に興味を持ち、エンタメを幅広い視点で捉えたクリエイションも得意としています。
作風は「kawaii」雰囲気をベースにしつつ、性別を問わず多くの人に楽しんでもらえる作品作りを目指しています。
▼Xアカウント( @KamiEna_Game )
https://x.com/KamiEna_Game
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サイトスペシフィックは、イマーシヴと同じく、20年代のマジックワードとして世に機能している。そのような場所の持つ唯一性を考えると、渋谷におけるハチ公前は、歴史と伝統を持った最も普遍的な公共空間であると捉えることができよう。そんなパブリックな「環境に宿る物語」を「体験できる小説」に置き換えたのがこの作品である。渋谷スクランブル交差点奥でのハチ公の霊との対話は拡張現実を超え、人の心の中に形を変えて潜入し、インタラクティヴな"口寄せ”へと変転する。「Immersive Nove」によって、イタコや巫女が霊媒となることと同様、都市というメディアに寄り添う、身体というメタ・メディアの拡張を入れ子体験することになるだろう。
NEWVIEW AWARDS 2024 審査員長
宇川直宏
現”在”美術家|DOMMUNE主宰
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この名もなき犬はハチの地縛霊であり、残留思念であり、ゴースト。サイトスペシフィックというテーマに、その土地に縛られた霊を出して登場させるというアイディアはこれ以上ないくらいにサイトスペシフィック。普段は不可視な存在である霊と出会うというのも、テクノロジーの使い方としてもユニーク。交流の後にハチが成仏するというのも、非常にインタラクティブであり、土地の臨場感が強固に作用する、通常の小説ではできない体験。そして自分の心もなぜか浄化される。
こう思うと、ハチ公前を待ち合わせ場所にするという行為は、会いたい人にやっと会えるという、非常にエモい特別な意味と体験をもつということに気付かされる。
人間中心主義の世界において、人間以外の視点をもつことが動物に拡張され、更に不可視な霊の存在にまで意識が拡張されるという、挑戦的な作品だと思う。
NEWVIEW AWARDS 2024審査員
サエボーグ
アーティスト
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この作品は愛と感情に満ちており、ARによる表現が非常に適しています。拡張現実を通じて、まるで人々が霊的な世界を見るための目を与えられたかのように、忠実な秋田犬・ハチ公がかつて主人を待ち続けたその場所に浮かぶ姿を目の当たりにすることができ、その光景は深く心を打ちます。作品の内容と技術的な実装が見事に融合しており、非常に完成度の高い作品です。
NEWVIEW AWARDS 2024 審査員
Lu Yang
アーティスト
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Immersive Novelは、ストーリーテリングとAR技術を融合させたユニークなサイト固有の体験を提供します。人気キャラクターを使用してプレイヤーを物語に導くことで、プレイヤー、環境、そしてストーリーとのつながりを生み出します。プレイヤーの動きと展開する物語の相互作用はシームレスで、体験をその場所との生き生きとした記憶に残るインタラクションに変えます。このプロジェクトの魅力は、キャラクター主導のエンゲージメントを用いてAR/VRストーリーテリングの新しいニッチを確立し、持続的な印象を残す能力にあります。没入型ストーリーテリングへの思慮深く創造的なアプローチです。
NEWVIEW AWARDS 2024 審査員
David OReilly
マルチディシプリナリーアーティスト
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「Immersive Novel」は、クラシックな物語のあらゆる要素を、シームレスにインタラクティブなバーチャル体験の世界へと移し替えるXRプロジェクトです。特に印象的なのは、ロケーション、ナラティブ(物語)、そしてユーザーとのインタラクションが切っても切り離せず一体となっている点です。
その結果、この作品は詩的で芸術性に溢れるだけでなく、芸術とテクノロジーの探求における模範例として、強い示唆力を持つ作品となっています。計り知れないインスピレーションを与えてくれる、受賞にふさわしいプロジェクトです。NEWVIEW AWARDS 2024 審査員
Gerfried Stocker
メディアアーティスト|Ars Electronica総合芸術監督
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「Immersive Novel」は、渋谷駅を舞台に、忠犬ハチ公の伝承を中心に構築された、サイトスペシフィックなARの魅力的で思慮深い活用例です。ARは幽霊の表現に特に適しており、私たち自身の目では捉えられないものを明らかにするレンズの役割を果たします。ARを通して幽霊が現れる様子は、霊が私たちの知覚のすぐ外側に存在しているかのように映し出され、体験を一層没入感のあるものにしています。ARが民間伝承や物語を生き生きと伝える、美しい例と言えるでしょう。
NEWVIEW AWARDS 2024 審査員
KEIKEN
アーティストコレクティブ
FEATURING WORKS
ファッション・音楽・映像・グラフィック・イラストレーション...etc
同時代のリアルな感覚を共有できるアーティストとともに創造する新たなカルチャー体験の作品群。