NEWVIEW SCHOOL 第2期 レポート 「基礎講座:ストーリーテリング」講師:田丸 雅智
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第3回目となる今回はショートショート作家の田丸雅智さんを講師にお招きし、物語の作り方について講義して頂きました。
「ショートショート」とは、様々な定義がありますが「数分で読める長さの不思議なお話」のことです。
作品にストーリー性を持たせることは小説に限らず重要ですが、どのように物語を作ったら良いのでしょうか?
まず初めに田丸さんの自己紹介、そして科学とフィクションの関係について話して頂きました。 -
科学とフィクションの関係
左:太田忠司、北野勇作、小狐裕介、田丸雅智、松崎有理、2018、『未来製作所』、幻冬舎
右:田丸雅智、2019、『オバペディア』、潮出版社
「科学とフィクションは何十年、何百年も前からお互いに刺激を与え合ってきたジャンルです。後に科学者となる幼い子供たちがロボットのアニメやフィクション小説から影響を受けて現実世界に反映を行ったり、逆に科学者が作家に刺激を与え新しいフィクションが生まれる、ということもあります。」
そう田丸さんは話します。
「昔はSFが現実よりもかなり先の世界を担っていましたが、現在は科学も進みお互い近いところで切磋琢磨しています」
田丸さんはxRやドローンなどのテクノロジーを用いた作品も発表されていますが、ディストピアな世界観だけではなく、現実とフィクションの間に位置するような”温かみのある少し先の未来”という世界観を描いている事が新鮮に感じました。 -
ショートショートを作ってみる
田丸さんの作品についてお話を聞いた後は、いよいよショートショート作りに挑戦です。
普段、小学生やシニア、企業など幅広い層に向けて講座を開いている田丸さんは、何よりも「楽しむこと」が大事だと言います。
短い制限時間内でのショートショート作りは初めてということもあり緊張しましたが、「とりあえず楽しもう!」という気持ちで皆さん臨みました。
大まかな手順は3つで、まず「不思議な言葉」を作ります。その次に「不思議な言葉」から発想を膨らませていきます。そして最後に、想像したことを短い物語にまとめます。
初めに、配布されたワークシート①中央の欄へ名詞を沢山書き出していきます。
目についたものや好きなもの、嫌いなものなど何でも良いそうです。そして書き出した名詞の中から一つ選び、連想する言葉を左の欄に書いていきます。
例では「太陽」に関連する言葉として、「発電に使える」「マグマみたい」「皆既日食」など多様な言葉が並んでいます。
次に、いくつか挙げた名詞と連想した言葉を柔軟に組み合わせ、右の欄に書き出していきます。
同じ言葉を何度使ってもよく、ニュアンスを変えるも自由です。 -
いくつか言葉を思いついた後は少人数のグループに分かれ、それぞれの作った「不思議な言葉」を発表し合いました。
どれも面白い組み合わせばかりで、この「言葉」がどのように「物語」になるのかワクワクします。
次に、先ほど作った「不思議な言葉」からひとつだけ選びます。妄想や空想を存分に発揮し、選んだ「不思議な言葉」の長所や短所、その他付け足したい設定などを書いていきます。
それらを簡単な文章にまとめたら、登場人物や時代、場所などの設定を考えていきます。
どう発想を膨らませていけばいいのか迷っている受講生に対し田丸さんは、「『自分の境遇に当てはめてみたり、世界や宇宙など全く違う登場人物や場所ではどうなるだろうか?』というように考えていくと良いと思います」とアドバイスされていました。
「発電に使えるタコ」も色々な設定が付け加えられ、あっという間にひとつの「物語」となっていきます。
「セリフを入れたりどこまで話を膨らませて良いか?という部分に制限はありませんが、『長い作品が優れている』訳ではありません。内容や文量も自由に楽しんでお話を作ってみて下さい」という田丸さんの言葉で受講生は最後のまとめに取り掛かります。
そして再びグループに別れ、各々完成したショートショートを発表し合います。
グループ内での発表が終わってもなかなか全体のZOOMに戻れないほど盛り上がり、皆とても楽しんでいる様子が印象的でした。 -
発表&講評
そして最後に各グループの代表1人が作品を発表していきます。
切ない話、ユーモアの効いた話、不思議な余韻のある話…それぞれ異なった空気感があり、受講生がショートショートを読み上げる度に田丸さんは「なるほど!」「面白いですね〜」と唸ります。
発表はどんどん白熱していき、講評だけでなくそれぞれ感想を言い合ったり続編や世界を想像したりと、1人1人の「物語」が色づいていくようでした。
そんな皆の興奮が冷めやらぬ中、今回の講義は終了。あっという間の3時間でした。
最初は物語を作ることに対してハードルの高さを感じていましたが、柔軟に自由に発想することでアイデアが「物語」に繋がっていく確かな手応えを掴むことができました。
Text:Miki (NEWVIEW SCHOOL 学生インターンシップ)